半熟cherry
郁の腕の中はあったかくて。
心地よくて。
ホッとして。
……目の奥が熱くなった。
『…ありがと…』
郁の温かさは。
私をも素直にさせてしまうらしい。
さっきまでの変な寒気も。
気持ち悪さも。
不思議なくらい溶けていった。
……もう無理。
誤魔化せないや。
今感じてる安心感。
触れられたトキの心臓を捕まれたようなドキドキ感。
目を細める微笑みも意志の強そうな目も。
照れ隠しに口元を隠す仕草も。
私。
………郁が好きなんだ………。
認めちゃいけない。
認めたら苦しくなるだけ。
そう思ってる段階でもう決まってたんだ。
「…茜…」
郁は背中にまわしていた腕の右腕だけを解いて。
そのまま私の頬に触れた。
………郁の顔がゆっくり近づいてきた。