半熟cherry
何をするワケでもなく。
何を話すワケでもなく。
ただ見てるだけの郁。
……なんか、気まずいんだけど。
しかも見られてるだけとかって。
緊張してしまうんだけど……。
それが、好きな相手ならなおさら。
心臓は2倍速に鼓動を打っていく。
『……あのさ〜…』
「…なに?」
『や、えっと…』
あまりの気まずさに。
郁に声をかけたケド。
……会話が見つからない。
よけいに気まずくなった…。
どうしよう……。
私は食器を洗う手を速めた。
「…今なら…」
『は?』
郁が何かをつぶやいた。
でも聞き取れなくて。
『今なんて言っ…』
顔を上げて郁がいるカウンターの横を見た。
でもそこには。
郁の姿はなかった。