半熟cherry

その時。

気まずい空気に割り込んでくるかのように。

遠くの方から聞こえてきた音。





…ドォォォォォン……パチパチパチパチ…

…ドォォォォォン……パチパチパチパチ…





これって……。



「……今日、花火やってるトコがあるってさ」



郁がソファーに座りながら言った。



『花火?!』



そう言えば。

…買い物に行ったスーパーにも案内のポスターが貼ってあったっけ。

場所は確か…。



『…ベランダから、見えるカモしれない…』



この部屋は5階の角部屋。

周りの建物より少し高くて。

遠くの方まで見える。



花火は上にあがるし、見えそうだよね。





『…見てみようか?』





私はベランダへ続く窓の前に立つと。

郁に言った。



 

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