半熟cherry
そんな私に気付くワケがない郁は。
「た〜まやぁ〜♪」
なんて。
プリンを食べながらご機嫌だった。
『……ん?』
気付いたらビールの缶は空になっていて。
……ん〜……
もう1本、いっちゃおうかなぁ。
2本くらいじゃどってコトないし。
口うるさい涼真はいないし。
……とってこよ……
そう思って、部屋に入ろうとした時。
「茜」
ふいに名前を呼ばれて。
私の足は止まった。
『…な、なに…?』
「サクランボ、食う?」
郁がサクランボの茎を指先でつまんでみせた。
『…郁は?』
「ん?前に食っちゃったからさ。
お返しシマス」
そう言いながら目を細めた郁の微笑みが。
また私をドキドキさせる。
「…あ〜んして?」
そう言って自分も口を開けた郁。
それに釣られて開けた私の口の中に。
サクランボがポイッと、放り込まれた。