半熟cherry
「…だからその顔、反則なんだって…」
郁は。
私の頬から手を離して。
顔を逸らしながら俯きかげんに口元を手で覆った。
『…郁…?』
「こっち見んな」
顔を覗き込もうとしたら。
“グイッ”と顔を違う方向に向けられる。
……そういうコトされると。
よけいに見たくなっちゃうんデスケド〜。
『…郁ッ!!』
「おわッ?!」
私は郁が口元を覆っている腕を引っ張った。
いきなりのコトに。
郁はバランスを崩した。
『ひぇッ?!』
……郁のバランスが崩れたはずなのに。
私のバランスまで崩れてフラフラしてる。
な〜ん〜でぇ〜ッ?!
ほんの数秒のコトなのに。
スローモーション。
このまま私。
…転びますよね。
しりもち、痛いかなぁ…。
なんて思ったトキ。
背中に強い力を感じた。