半熟cherry
「ほら…言って?」
郁の視線の鎖に捕われた私。
でも。
“カンチガイ”だったトキのコトを考えると。
たった何文字かの言葉が出てこない。
…怖いんだ。
“教師と生徒”
“カンチガイ”だったら。
その関係すら壊れてしまうんじゃないかって。
黙って郁の顔を見つめていたら。
郁が口を開いた。
「…またそんな顔して…。
言わないなら、キスするよ?」
そう言いながら指で顎を持ち上げた。
“クスッ”
口元だけ小さく笑うと。
「…今度は手加減しない」
薄く開いた郁の唇が迫ってくる。
20センチあった空間が。
15センチ、10センチと狭まってきた。
唇の隙間から赤い舌が見え隠れしてる。
8センチ、5センチ…。
吐息を感じるほど近づいたトキ。
唇が触れる寸前。
郁が囁いた。
「…俺は好きだけどね」