半熟cherry
『…わッ?!』
予想外のコトに体がついていかなくて。
よろける体を支えきれない。
引っ張られるがままに。
体は斜めになっていった。
『危ないでしょ…ッ?!』
気付いたら。
私は郁の腕の中にいた。
「…何度も言わせんなよ」
郁は耳元でそう囁くと。
私の肩に手を置いて。
郁の体から少し離した。
そして。
ほんのり赤い顔をしたまま。
真っ直ぐに視線を絡ませた。
心臓の音が聞こえる。
体から響いてくる音なのか。
耳から入ってくる音なのか。
わからないくらい。
…ただ、郁の言葉を待っていた。
「…茜が好きだ」
耳に入ってきた郁の言葉。
顔を見ると。
その瞳には迷いなんかなくて。
心の奥まで見透かされているような気がした。