半熟cherry

やっと聞けた郁の気持ち。



“カンチガイ”でも“自惚れ”でもない。

郁の言葉で聞けた。



“好き”って言葉がこんなにも嬉しいと思ったコトがあったかな…。


胸の奥がホカホカしてくる。



“郁は私が好き。私も郁が好き”



そう思っただけでなんだか恥ずかしくなってきて。

顔が赤くなってきそうな感じがした。





『…でも教師と生徒が付き合う、とか。
周りにバレたら大変だよね』



ポツリ。

私の呟いた言葉に郁が言葉を続けた。



「俺、好きだって言っただけじゃん」



『はッ?!』

「好きですイコール付き合って、ってワケじゃないデショ?」

俺、付き合ってとは言ってない。

そう郁は付け足した。



はぁッ?!

なにその屁理屈!!

お互い好きなら付き合うのがフツーでしょ?!



郁は。

“フッ”と唇の端っこを持ち上げて。

何度か見たことがある真っ黒い微笑みを浮かべていた。



 

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