半熟cherry
なんて。
頭の中で甘い考えを描いていたら。
「…さぁね」
“フッ”と唇の端っこを持ち上げながら立ち上がった。
『いーじゃない!!教えてよ!!』
「イ・ヤ・だ〜。
…さぁて花火も見たし。宿題やんなきゃ、宿題」
なんて言いながら。
空になったビールの缶とプリンの入れ物に手を伸ばす郁。
こんなトキばっかり生徒になるんだからなぁ。
…調子イイヤツ…。
私も部屋に入ろうと立ち上がった。
「あ、そーだ」
なにかを思い出したように郁が振り返る。
『…なに?』
「ん〜、忘れ物?」
は?
なに“忘れ物”って…。
郁を見上げようとしたその瞬間。
顔に影がかかる。
頬を掠める細い髪。
そして。
『……ッ?!』
“チュッ”という軽いリップ音と共に。
唇に柔らかい感触が落とされた。