半熟cherry
「…あの日も、見せたデショ?」
そう言って。
結ばれたサクランボの茎を指先で摘まみあげる。
ドクン…ドクン…。
体中が心臓になってしまったみたいに脈を打ってる。
「……思い出してみる?」
目の前にいたはずの逢沢クンが。
耳元に唇を寄せてささやくように言った。
『……ヒャッ!!』
耳に。
唇が微かに触れた。
私が後退ったせいで。
ガタンッと机が音をたてる。
『ちょッ…逢沢クンッ!?』
逢沢クンは私が後退った分だけ詰めてくる。
どうしよう、どうしよう!!
頭がまわらない。
体は逢沢クンの視線に巻き付かれて動けない。
生徒じゃない。
今の逢沢クンは。
“オトコ”だ…。
『………ッ!!』
視線が絡まった。
と、気付いたトキには。
逢沢クンの顔が近づいてきていた。