半熟cherry
ブーブーブー…。
顔の真横辺りで微かに音がする。
たぶん。
制服のポケットに入ってる郁のケータイだ。
でも郁は。
ケータイを取り出す素振りも見せずに知らん顔。
……気付いてないの……?
『……逢沢クン』
「なんデスか?」
『……ケータイ……』
「…気になります?」
立ったまま私を見下げる郁は。
ホント、イジワルそうに口元を緩ませる。
やっぱり気付いててそのままなんだ。
自分が“今すぐ”って書いたくせに。
「終わった!!戻ってよし!!」
「ッてぇ!!」
膨れっ面になりそうな私を止めたのは。
一美と涼真の声だった。
「叫ぶほど痛くない!!」
「切れてんだよ?!痛ぇし!!」
「サボりの口実でしょーが」
…プププッ。
あの涼真が、一美に負けてる…。
いつも私をバカにしてる涼真がやり込められてるのを見るのは。
なにげに楽しい…。
思わず笑いそうになったその時。
ガラッ。
いい音をたてて、保健室のドアが開いた。