半熟cherry

なんで?!

よろけた?!





振り向いた私は。

何かに倒れこんでしまった。

…微かに香る香水の匂いが。

“物”ではなく“人”だと言うことがわかる。





『……ごッ、ごめんなさい…ッ』





謝ってすぐに退こうとした。

でも。

腰に腕がまわされて、動けない。





『……なん…ッ』





この状況が理解できない。

こんなことするの、誰…ッ…?!





相手が誰なのかを確かめるべく。

顔を上げようとした。

と、同時。

頭の上から降ってきた声に。

心臓が跳ね上がった。





「…確かに後ろ向けとは言ったケドそっちから抱きついてくるとはなー」

『…はッ?!』





……この声…って…。

聞いたことのある声ビックリ。

見上げて顔見て更にビックリ。

私が倒れこんだ相手。

それは。

郁だった。



 

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