半熟cherry

パッ、と。

言葉と同時に郁が腕を離したから。

私の体が自由になった。





「いくらなんでも廊下じゃマズイでしょ?」





ニッコリ笑いながら。

そんなセリフを口にする郁。





………ひょっとして。





『またからかった?!』





最初は顔に息吹きかけられて。

次は“なぁんてね”?!

人をからかうのもいいかげんにしろ!!





「あ、顔赤い」

『ウソッ?!』

「ウソ」





………コイツ………。

今、ホンキで殴りたくなったわ……。





「今度抱きついてきたら、鍵のかかる空き教室に連れ込むケドね」





口元と口調は笑ってる。

でも。

瞳は笑ってなかった。



 

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