半熟cherry
chapter:05
それから。
一度だけ郁からメールがきた。
郁の番号とアドレスを登録しておくように、と。
それに。
“赤い顔した茜は可愛いね”と。
余計な一言を添えて。
私は返信しなかった。
またからかわれるのかと思うと。
イライラしてくる。
だから放置。
幸い文化祭前の特別授業で。
郁と会うこともなかった。
そして今日は文化祭。
学校内がいつもとは違う賑やかさを見せている。
「こちらカラオケ喫茶で〜す」
「風船アート見に来て〜」
「占いの館、11時から予約受けてます〜」
いろんなところから声がする。
でもここは。
『…静かでいいなぁ』
静かだし、心地よい温度だし。
サイコーです…。
「ここはサボり場じゃないぞ〜」
ポコン。
頭を叩かれた。