半熟cherry

『……え……?』





今“茜”って、言ったよね…。

私のコトを名前で呼ぶのって…。





慌てて顔を上げると。

そこには。





『…郁ッ?!』





まだ着替えてない。

執事の格好のままの郁が。

こっちに向かって歩いてきていた。





「…島崎なんかに触られそうになってんなよ」





ハァ、と呆れたように小さくため息を吐くと。

そのまま真っ直ぐに歩いてきて。

郁は私の目の前で止まった。





「…そんな格好して…誘ってんの…?」





そう言って。

私の背中にある窓に手をつくと。

唇の右端を持ち上げて微笑んだ。


 

< 80 / 283 >

この作品をシェア

pagetop