半熟cherry
ピーンポーンパーンポーン…。
校内放送が入った。
《…2年6組 逢沢 郁クン、至急グラウンドまで来て下さい。
繰り返します…》
呼ばれてるのは郁だ。
「…イイトコロだったのに…」
そうつぶやくと。
私の体から離れた。
途端。
周りの空気が冷たくなる。
でも。
私のカラダはまだ熱を持ったまま。
「…呼ばれてるし、俺行くから」
何事もなかったかのような郁は。
スッと立ち上がるとドアに向かって歩いていった。
「…あ!」
途中。
何かを思いついたように振り返る。
そして。
唇の右端を持ち上げて、意地悪そうに微笑んだ。
「早く着替えな。“ココ”見えるから」
“ココ”…。
そう言いながら鎖骨辺りを指さした郁は。
小さく笑って教室を出ていった。