半熟cherry
「涼真ぁ。俺、先帰るわ」
スッと、郁が私の側から離れる。
…周りの温度が急に下がった気がした。
「なんだよ、いきなり」
「帰って勉強する」
「はぁ?!」
丸い椅子をギシギシ揺らしてる涼真が声をあげた。
「べ・ん・きょ・う・す・る・の」
郁はベェッと舌を出して保健室から出ようとした。
「お前、やらなくてもできんじゃん」
涼真の言葉に保健室から出かかった体を止めて。
郁は真っ黒い微笑みを浮かべた。
「…やらなきゃいけない理由ができたんだよ」
フッと口元だけ笑うと。
「じゃあ“センセー”さよーなら」
ヒラヒラと手を振りながら保健室から出ていった。