恋愛小説
待ち合わせ場所の公園に行くと、メンバーの中で唯一優しい
悟お兄ちゃんが、待っていてくれたので、殴り合いまで覚悟した私は
正直、ホッとした。


「今日は義美がピアスを取ったりして、ごめんな。アイツも
あんな意地悪ばっかりしているけど、本当は優しいんだよ…」
私が近くに行くと、悟お兄ちゃんは大きな身体を小さくして
私に謝ってくれた。

「ううん、悟お兄ちゃんが優しいからそう思うんだよ!
いつも義美君は意地悪ばっかりだし、今日だって
お兄ちゃんは悪くないのに謝ってくれて…」

「う~ん、紗恵ちゃんには、そういうのは伝わらないって、
俺もいつも義美に言っているんだけどね、アイツも照れ屋だから。」
義美君をこんなにかばってくれる、悟お兄ちゃん…お兄ちゃんが
私にも居たら、お父さんとお母さんの事を、相談したりできるのに。

「照れ屋って…。あ、ところで、ピアスは?悟お兄ちゃんが
取り返してくれたから、来てくれたんでしょ?本当にありがとう!」
悟お兄ちゃんが大きな手に似合わない、小さな袋を持っているのに
気が付いて、手を差し出すと、ちょっと悲しそうな顔をした。

「ああ、ハイ、コレ。預かってるよ。大切なものなんだね。」
「うん!ありがとう!じゃあ、代わりに預かってたこのピアス、
義美君に返して貰ってもいい?もう口も聞きたくないし。」

悟お兄ちゃんは、悲しそうな顔から、ガッカリした顔になって
「あのね、沙恵ちゃん、どうしてそんなに義美を嫌うの?」と聞く。

「お兄ちゃんは優しいし、大好きだけど、義美君は意地悪だし。
私が嫌いっていうより、義美君が私を嫌いなんだよ、絶対に!」
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