恋愛小説
「義美君が私を好きだなんて、嘘なんだから、別にいい。それよりも
大切なものを私が持っていていいわけがないし。捨てられないよ!
義美君が来るなら、直接、義美君に返す!」仁王立ちで震える私を見て
ため息をついた悟お兄ちゃんが、携帯のボタンを押した。


「おい義美、お前沙恵ちゃんには自分で言え。今すぐ来い。」
一言だけ言うと、携帯電話をポケットに入れて、私をベンチに座らせる。


「義美は、俺より男前だし、俺より数倍優しい。沙恵ちゃんは
真面目だし、男をよく分かってないから、義美の良さを
分からないかもしれないけど、付き合ったら幸せになるから
義美が来るまでに、ちょっとは考えてやって欲しいんだ。
あいつがどういう人間か、俺は一番分かっているし、保証する。
あいつは本当に沙恵ちゃんを好きだから、フラレるのが怖くて
今日は来れなかったんだから。沙恵ちゃんの物を欲しいって
思うあいつの気持ち、俺は痛いくらい分かるんだけどなぁ…」


いつも笑顔で皆の中心に居る悟お兄ちゃんが、今日はなんだか
悲しそうだったり、私の気持ちを決めつけたり、変だから、
なんとなく本当なのかもしれないなぁ、と思ってみたけど、
あのヘラヘラした義美君が私を好きだなんて、やっぱり信じられない。


真っ暗な公園に、足音が近付いてくるのが分かって、
悟お兄ちゃんが、立ち上がった。「義美か?」
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