恋愛小説
「急がないと、バイトに合わないから。何?」


早口でお父さんに詰め寄ると、お父さんは疲れきった顔で
「お前のために俺は…」と言って、少し黙って考えていた。


「何っ?本当に急がないと、バイト先に迷惑だから、お願い早く…」
「いいか、落ち着いて聞け。お前は、俺の苗字になる。
アイツ、お母さんはお前を捨てたんだ。いいか、分かるか?」


何を今さら…と思った。
落ち着いて欲しいのは、お父さんだよ。


最近のお父さんは、お母さんの悪口ばかりを言うから、
ショックはあまりなかったけど、なにも私が急いでいる時に
わざわざそんな話をしなくてもいいのに。


「誕生日おめでとうもなく、娘に母親の悪口を言うお父さんと
娘を捨てた母親、どっちにも味方したいと思わないし、本当に
私はこれからアルバイトだから、もう行くよ…。」
言いながら、何故か涙が出た。「お父さんもお母さんと同じだよ。」
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