アリス in wonderland

「ほら、早くごはん食べちゃわないと遅刻するわよ。」

ぼーっとするあたしに、そう声をかけてママがあたしの前に座る。

「ピアノ、気になるならまた弾いてみたら?」

「え?」

「高校の勉強とか、色々忙しいとは思うし。昔みたいには弾けないかもだけど。自転車乗るみたいに、覚えてるもんなんじゃない?感覚は。」

そう言って微笑むママは。

穏やかだ。

閉ざされた過去に、何かがあるわけじゃない…のかな。


「…うん。でもピアノないけどね。」

あたしが冷静にそう言うと

「あ、そっか。学校で貸してもらえないの?」

そう呑気に言う母親に、笑ってしまう。


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