アリス in wonderland


「…どうして、あたしにそんな話を?」

そうやっと口を開いてたずねたあたしに、勇太クンは笑顔をくれる。

「アリスちゃんなら、アイツの心に入っていける気がしたから。アイツさ、あーやって普段ふざけてるじゃん?あーやって心隠してんだよね。絶対誰も入るスキなんてないように。唯一スキがあるのは、アイツの歌詞の世界だけだから。」


「そんな。勇太クン達にも心閉ざしてるなら、あたしには絶対無理だよ。」

だってアイツのコト何も知らない。

あたしの前ではふざけてばっかりだし。

「そんなコトないよ。このバンドのボーカルはさ、アイツが心許せると思ったヤツにしか頼んでないんだ。アイツの歌詞を歌うっていうのは、そーゆーコトなんだ。」

そう言って勇太クンは微笑むと、いたずらっぽく付け加える。

「宇佐美に惚れちゃったのは、これから大変だと思うけど、アイツのコトよろしく♪」


「あっ、あたしがいつ惚れたって!?」

「ん?まぁ気にしないで☆じゃ、教室戻ろうか。」

自分でも分かってないこの感情を、言い当てられるのは何か歯がゆい感じがするけど。

あたしは何も言えず、勇太クンの後ろから教室へ続く階段を下りた。




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