この想いは・・・。



「俺、お義母さん家に忘れ物して戻って来たときがあったんです。

その時、部屋で泣いていたお義母さんを見たんです・・・"宏太"って何度も・・何度も言って涙を流すお義母さんを見たんです。


それから、時々・・・仕事帰りにドアの前まで来てお義母さんの泣き声が聞こえるか来てました」



正則くんがそんなことをしているなんて初めて知った。


「お母さん・・・」


視線を正則くんから夏歩に変えると夏歩は涙で顔がグチャグチャになっていた。



「ごめんね。無神経なこと言ってごめんね・・・お母さんはあたしの前で泣かないから、お父さんのことなんて何とも思ってないのかと思ってた」



あたしは夏歩の頭を撫でた。


「夏歩、あなたはもう一児の母親でしょ・・・?

簡単に涙を流さないの。宏一が心配するわよ」



「・・・お母さん。なんであたしの前で泣かないの?」



「・・・宏太はあたしのすべてだった。宏太はあたしの特別だった。

宏太を愛していた。


だからこそ夏歩には泣いたとこ、見せたくなかった」


「なんで・・・?」



「あなたは宏太とあたしの宝物で大切な子だから」



「え・・・」


< 168 / 195 >

この作品をシェア

pagetop