この想いは・・・。
「帰りまーす」
そう言えたのは信が帰った3時間後。
「空くん、帰るんだ」
坂野が疲れた顔をして言った。
「お前まだ帰んねーの?」
「まだ今日の仕事できてないの・・・」
こいつ3時間で老けた?
そう思えるぐらい坂野は疲れきっていた。
「空くんも帰るんだ・・・遅かったね」
「遅かった?」
坂野の言う意味が分からない。
「そう、帰るの遅かったね」
「どういう意味だよ?」
「谷口くんが帰ったとき・・・空くんも帰りたかったんでしょ?」
「そりゃあ、帰りてーよ。仕事なんてしたくねーよ」
「ふざけないで。あたしが言ってるのはそういう意味じゃない。
空くんも帰って行きたい所があったんじゃなかったの?」
嫌いだ。
あの目は嫌いだ。
全てを知っている様な目が怖くて嫌いだった。
信の真剣な目も、
坂野の真剣な目も、
嫌いだった。