この想いは・・・。

「宏太はまだ結婚しねーの?」

谷口くんは楽しそうに聞く。


「したいんだけどな・・・愛子がまだ恋人気分を味わいたいって言うんだよ」


にやけた顔をして言う空くん。



「恋人もいいけど、やっぱ夫婦だろ!結婚はいーぞ!」


谷口くんはとても幸せそうに笑って言った。





あたしはそんな谷口くんをボーっと見つめていた。



空くんは後ろに振り返って、2人と同じ会社に向かっているあたしと目が合った。



「・・・信は、残酷だな」


ポツリと空くんは言った。


「宏太なんか言ったか?」


「言ってねーよ」


空くんは谷口くんの頭を1発殴ると、頭を抱える谷口くんを置いて先に会社に入って行った。



きっと空くんは、あたしのために殴ってくれたんだ。


あたしは心の中で空くんに『ありがとう』と言った。




殴られた谷口くんは会社にはまだ入らずに空を見上げていた。



会社の前にいる谷口くんを見ているとあの日の谷口くんを思い出した。





あの日・・・・――――――谷口くんが奥さんの愛子さんに恋をした日だ。



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