この想いは・・・。


あれからなん年経っただろう・・・―――――




「坂野―!このプリント、コピーしてくれ」


「あっ、はい」


コピー機に行くと、いつも見ていた人の背中がいた。



一瞬行くのを躊躇った。


でも今は仕事だ。


ちゃんとしなきゃ。


「谷口くん、コピー終わった?」


「あ、坂野。あと5枚なんだ。少し待って」


谷口くんはいつものように笑って言った。



「なぁ坂野」


「どうしたの?」


「今月俺たちの結婚記念日なんだけどさ、なに買ったらいいと思う?」



ズキッ



「・・・・なんで、あたしに聞くの?」



そんなこと聞いてほしくなかった。


「坂野だったら、いいアドバイスくれると思ったんだよ」


きっと他のことなら喜んで聞いていたと思う。


でも・・・・これについては別。




「ごめん。あたし分かんないや。好みもあるしさ」


「そうだよな・・・なんかごめんな。あっ、コピー機どーぞ」



笑顔でデスクに戻って行った谷口くん。


あたしは涙で彼の背中が滲んで見えなかった。


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