俺様先生と秘密の授業【完全版】
 

 ……



 どれだけ眠っていたのか、判らない。

 でも。

『愛莉』と、名前を呼ばれたような気がして、目が覚めた。

 まだ、夜で。

 豆電球だけが、ほのかに明るく、いつもと変わらない自分の部屋を照らす。

 ……と。

 いつもは、居ない男、二人も。

 彼らは、半円形になっている、あたしの部屋のソファーセットに、それぞれ毛布をかぶって横になっていた。

 大の男二人が、長々と寝そべっていても、だいぶ余裕があるはずのソファーに。

 直斗と兄貴は、頭を寄せ合い、何か話し合っているみたいだった。

 あたしが、起きたことにも気がつかないほど、真剣に。

 こっちの方は、まだ頭痛がすごくて調子悪く、さらに、眠くて。

 夢と現実の中間にいるような、感じだったけども。

 兄貴たちの言葉が気になって、そのまま、ぐう、とは眠れなくなっていた。

 だって。

「俊介は、本気で岸に愛莉をやるつもりなのか……?」

 なんて、とっても気になることを言うんだもんっ!

 ヒトの話をこっそり聞くことは、とても悪いことだとは、思うけど。

 どーしても、気になる。

 あたしは、熱のせいで荒くなりがちな呼吸を抑えて、兄貴たちの話を聞いていた。
 

< 136 / 362 >

この作品をシェア

pagetop