俺様先生と秘密の授業【完全版】
 そう、直斗が、言ったとたんだった。

 兄貴は、自分の掛けていた毛布をはねのけた、かと思うと。

 次の瞬間には、直斗の胸倉を掴んでいた。

 まるで、猫のように音もなく、俊敏な兄貴の動作に、直斗は何の抵抗もできずに、高々と吊るされた。

「しゅん……すけ」

 苦しげに呻く直斗に、兄貴は、鋭くささやく。

「もう一度、そんな事を言ってみろ。
 ……殺してやるから」

「……でも」

 更に何か言おうとした直斗を乱暴に振って、兄貴は、言った。

「愛莉とオレは、確実に四分の一、血がつながっている。
 オレの母親の妹が、愛莉の母だから。
 ……だが……!」

 そこまで言って、兄貴は、ぎり、と唇をかんだ。

「……もしかしたら、もっと濃く、繋がっているかもしれない!
 オレの母は親父の愛人だったし、愛莉の母も、そうだった時期があるから!
 愛莉の母が死んで、だいぶたった今、真実はDNA鑑定でもしないと判らないだろうが。
 クソ親父も、身に覚えがあるから、愛莉をこの水野小路家に引き取ったんだろう?
 ……この状態で、一体オレにどうしろ、って言うんだ!」

 言って、兄貴は、ぐい、と直斗を引き寄せた。

「どんなに、愛莉の事が好きでも、愛していても!
 血のつながった兄として、そのまま黙って見守るしか、ないじゃないか!」

 

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