俺様先生と秘密の授業【完全版】
 男のクセにキレイな、キレイな、直斗。

 女の子みたいに、甘い顔立ちをしている岸君とは違う。

 もっとシャープな、大人の男の人の顔だ。

 目付きの鋭い、兄貴とは違う。

 優しげで、でもどこか。

 イタズラの子供みたいに、きらきら輝いている、瞳。

 ……正直なことを言うと。

 あたしの一番、好きな顔だった。

 それが、目を開いたままの、あたしの目の前に、あり得ない近さで迫って来る。

 いや~~ん

 まつげ、長い~~

 じゃ、なくって!

 ひ~~ん

 その、直斗の花びらみたいな唇が。

 あたしの唇に、触れる寸前だった。

 緊張感に耐えきれなくなったあたしは、こくん、と生つばを飲み込んだ。

 と。

 直斗が、ようやく止まる。

 そして、言った。

「……薬、飲めたか?」

「……へ?」

 ……言われて確かに、気がついた。

 あれほど、飲み込めなかった、薬が。

 確かに、もう口の中に、ない。


 って、えええっ!

 もしかして、今の、薬を飲ませるために?

 思わずきょとんと、しているあたしに。

 直斗は、げらげら笑って、すぐ離れて行った。

 唇にかすりもせずに。
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