俺様先生と秘密の授業【完全版】
 伊井田さんも、嬉しそうに『加月さん』って、手を振ってるし!

 声に、恐る恐る振り返り。

 謎の兄貴の顔を確認して驚いた。

「よ……」

 ……しずみ さん

 と言いかけた言葉は。

 沈黙の狼のトップ4ー1(フォー、ワン)を張るゴツい手にぱくっと蓋をされ。

 そのまま、ずりずりと教室の外に押し出された。

 そして、裏庭まで、半分抱き抱えられるように連れていかれ……

 そこに人が居ないことを確認して、やっと解放してくれた。

 ウチの学校の制服が、まにあわなかったのか。

 ジーパンに、Tシャツ姿の吉住さんは、いつもと雰囲気が違う。

「吉住さんっ!」

 自由になった口で。

 抗議しようと開いた口は、深々とした、礼に塞がれた。

「愛莉さん!
 すみませんっ!
 驚いたでしょう?」

「そりゃあ、もう!!」

 一体これは何って、抗議の声に。

 吉住さんは、もう一度頭を下げた。

「大総長の指示で、センエツながら、愛莉さんの兄役を務めさせて、いただきます。
 本当は、今日の学校帰りにでも、挨拶にうかがう予定でしたが。
 愛莉さんが、思ったより早く、学校に来られて、説明が遅れました」


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