俺様先生と秘密の授業【完全版】
「え?」

 あたしは、吉住さんの言葉に、耳を疑った。

 ウチみたいな、闇の組織の全面抗争って。

 相当大きな、ケンカが始まるってことだった。

 だから、兄貴はあの日以来、家に帰って来ず。

 会の事務所に詰めているに違いない。

 そして、岸君も。

 ウチにお見舞いどころじゃないはずだ。

「俺も、恋愛ごとの延長で、大総長のために、恋の片棒を担ぐぐらいの気持ちで、愛莉さんのガードに入れれば、気楽だったんですが……
 コトは、非常に深刻で。
 最悪、組織員同士、命のやりとりまでしかねません」

 命のやりとりって!?

 天竜組の縁続きの岸君と……兄貴や、吉住さんが?

「そんな、大げさな……」

 信じられない、と呟くあたしに、吉住さんは、首を振った。

「水野小路会の方が藤沢組より大きく、強いです。
 しかし、天竜も藤沢も、部下に指令を出している本拠地をつかませず、潰せない厄介な相手なんです。
 今のところ、愛莉さんまで被害が出るとは思いにくいのですが。
 岸に正体がバレている以上、今後の動きによっては、愛莉さんは非常に危険です」

「そんな……!
 それに、岸君だって!
 天竜組にあたしのコトを簡単に話すなんて、思えないし!」

「残念ながら……そこらへんは、様子見ですね」

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