俺様先生と秘密の授業【完全版】
「俺は、昔、家出して。
 大事なバイクを駅の駐輪場に置きっぱなしで。
 深夜のファーストフード店と、インターネットカフェをねぐらに、街をさまよってました」

 言って吉住さんの目はかすかに遠くを見た。

「金が無くなれば、悪いことをやって調達してた生活で……
 縄張り破りのケンカは日常茶飯事でしたから。
 大総長に出会えなかったら。
 せいぜい、街のチンピラ止まりで。
 たった一人で野垂れ死にしてたかもしれません」

 だけれど、大総長は、俺に『仲間』と『帰る場所』をくれたんですって、吉住さんは、言う。

 そして、それが、何よりも嬉しかったって言う吉住さんの瞳は。

 なんとなく潤んでいるようにも見えた。

「大総長は、すごく厳しい人ですが、懐が深くて、暖かいです。
 家族からも見放され。
 ケンカしか出来ない俺を、受け入れ、沈黙の狼なんて言うデカいチームのトップにまで引き上げてくれたんですよ?」

「でも、それは。
 チームのトップとして、大勢を率いて走る力は。
 吉住さんが、元々持っていた能力じゃないの?
 何もヤバい人間を相手にしなくても。
 普通の場所で立派に出世するんじゃないの?」
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