俺様先生と秘密の授業【完全版】
「よ、岸。
 話し、しようぜ?」

「……!」



 こんな所に吉住さんが現れたのが、よほど驚いたのか。

 がたたっ、とイスを鳴らして岸君は、後ずさった。

 その首根っこを、ひょいと掴んで吉住さんは、言った。

「愛莉さん、すみません。
 ちょっとこいつとも、話つけて来ます。
 廊下に居るんで、ご用があったら声をかけて下さい」

「よし……じゃなかった、猛さんっ!
 岸君に乱暴は……!」

「……しませんよ。
 こんな軟弱なヤツ殴ったら、拳が汚れます」

 とは、言ったものの。

 吉住さんは「さあ、来い」と岸君の手をかなり乱暴に引っ張った。

 と。

 今まで、無言だった岸君が、かすかに呻いてよろけ……あたしは、見た。

「岸君!」

 そう。

 前髪の隙間から、見えた岸君の目の回りが、まるでヒドく殴られたあとのように腫れていた。

 前髪は、あげないんじゃなく、あげられないんだ……!

 じゃ、猫背の方も!?

「もしかしたら、岸君、お腹もヒドく……誰かに殴られたの!?」

「………」

 かすかに頷く岸君は、そうだ、と言ってる。
 
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