俺様先生と秘密の授業【完全版】
 行き場のなくなった岸君は、相当に落ち込んでいるに違いなかった。

 半日教室に返って来られない、ってことは。

 授業に出られないほど、傷が酷いのかもしれなかった。

 考えれば、考えるほど心配なコトが山積みで。

 あたしは、おそるおそる保健室の扉を開けて……

 ……

 驚いた。

 ……

 いつもお昼休みに、お弁当を広げて食べる保健室のテーブルに。

 今、山ほど広げられているのは、大量のバイク関係の雑誌と地図なんだもん。

 そして、落ち込んでいるはずの岸君は。

 早瀬倉先生と、バイク雑誌片手に、なにやら楽しげに、笑ってる。

 笑いすぎて、傷が痛むのか、時々痛てって、お腹を押さえながら。

「ちよっと!
 直斗! 岸君っ!」

 心配すれば、大損する目の前の光景に、声をかければ。

 やっと、二人があたしを見てくれた。

「やあ、加月さん」

「お、愛莉じゃないか。
 なんだ、もう昼休みか?」

「なんだ、昼休みか? じゃないわよ!
 ヒトが心配して来てみれば、何よ?
 あたしと吉住さんには、さっさと帰れって言ったクセに!
 よっぽど傷が酷いのかと思ったじゃない!」
< 183 / 362 >

この作品をシェア

pagetop