俺様先生と秘密の授業【完全版】
「うん」

 うなづく兄貴に、あたしは、ほっとして笑った。

「岸君は、天竜組から完全に抜けるって」

「……それって、愛莉ちゃんのために?
 これからはウチと……沈黙の狼と走るのかな?」

 心なしか。

 さっきよりも、視線が鋭くなったような兄貴に、今度はあたしの方が手を振った。

「……あたしのことは、きっかけだって。 
 もともと、岸君って、優しすぎて族とかそーいうの合ってなかったんだよ。
 今までも基本は一人で走ってたし、良い機会だから完全に天竜組は、やめるって。
 直斗や、吉住さんみたいなハイレベルのヒトビトと、同好会で走れるし。
 あらためて狼になるつもりは、ないんじゃないかなぁ」

「……ふうん。
 でも、未成年だし。
 今でも、藤沢天竜の居候なんだろう?
 他に、後ろ盾がなけりゃ、完全に天竜組と切れるのは、難しいんじゃないか……?」

 うん。

 あたしもそれ……って言うか。

 岸君が、居候先から出たら、どこで暮らすのか、心配だった。

 でも。

「具体的に、ドコ、とは教えてもらわなかったけど本人は『絶対大丈夫』って」

 ……そう言われれば、それ以上強くは聞けないし。

 
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