俺様先生と秘密の授業【完全版】
 そんな風に。

 しみじみ言った、兄貴の言い草が、何だか可笑しくて、あたしはまた笑う。

「なんか、兄貴、じじくさ~~」

「あっ、言ったな~~
 僕、普段からだいぶ年上に見られて、ひそかに落ち込んでいるの、知ってるくせに」

 言って、兄貴は、ぷう、と頬を膨らませた。

 あたしと一緒のときはこ~~んな表情して、年相応以下、なんだけどねぇ。

 狼やら、水野小路会の前でやったら大騒ぎだ。

 何だかほっとしてくすくす笑いが止まらない。

 そんなあたしに、ほほ笑んでから、兄貴は、少しだけ真面目な顔になった。

「……でもね。
 ずっと笑っていてほしい、って思うのは、本当なんだよ?
 愛莉の悲しい顔や、辛い表情は……絶対、見たくないんだ」

「兄貴……?」

 その、兄貴の言ったセリフの中に。

 ちかり、と。

 今までに聞いたことのない……艶っぽい……みたいな。

 声色を発見して、あたしは、首をかしげた。

「……だから、僕は愛莉のコトがどんなに大好きでも。
 本当に大切な妹だから。
 女性として……女として、この腕に抱くことができないんだけど、ね」

「……え?」

 それは、どういう意味……?

 なんて、聞き返す余裕さえ、なかった。



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