俺様先生と秘密の授業【完全版】
 兄貴が涙でうるんで、少し光りすぎる目をあたしに向けた。

「子供のときから、一緒だった愛莉の前だけ、僕は本当の自分になれる。
 心が自由になることができる」

「……兄貴」

「『愛してる』なんて。
 そんな言葉がすごく薄っぺらく感じるぐらい、僕は愛莉の事が好きだ」

 滲んだ涙は、ただの一滴もなかったけれど。

 まるで、兄貴は、泣いているようだった。

「愛莉に辛く、苦しいことがあるならば。
 自分が傷つくことよりも痛いよ。
 大事な大事な妹として、出来る限りのモノから、愛莉を守りたかったよ。
 ……今までは」

 あたしを抱きしめる手に力が、こもる。

「だけども、もし。
 愛莉が妹でなくなったとしたら……
 僕が。
 僕自身が、愛莉を傷つけてしまうかもしれない」

「まさか、兄貴がそんな……」

 ……コトをするわけない。

 と続くはずだった言葉は。


 ……


 狂おしく、あたしの唇を塞いだ、兄貴の唇に閉じ込められた。

 
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