俺様先生と秘密の授業【完全版】
 流されてゆく感情が、怖くて……熱くて。

 どれくらい、そうしていたのか。

 めまいを起こしそうなほど、長く。

 あっけないほど短い時間。

 震えが止まらないあたしを、しっかりと抱きしめた兄貴が、ようやく唇を放した。

 そして、更に追い打ちをかける。

「愛莉を手に入れるために、岸を……愛莉に心を寄せるというのなら……直斗でさえ。
 追い詰めて……排除してしまおうと、考えるのは罪?」

「……兄貴……まさか……!」

 岸君を狼に入れる話や。

 もしかしたら直斗が、闇討ちに逢いかねない話が、とろけてしびれた頭によぎる。

「まだ本当に従妹なのか……妹なのか判らない、最愛の女を。
 今、ここで抱きたい、と思うのは、罪?」

 あたしを抱きしめ、壁際に追い詰めた、兄貴の手が。

 ふ……と、緩んだかと、思うと。

 その両手が、あたしの着ていたブラウスの襟(えり)にかかった。

 そして、そのまま力がこもる。

「……やだ、止めて?
 止めて、止めて……お兄ちゃん……っ!」



 ばち……ばちっ……びりびりっ!


 あたしの悲鳴虚しく、ブラウスのボタンが飛び、薄い布地が引き裂かれた。
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