俺様先生と秘密の授業【完全版】
「愛莉さん?」

 何か、様子が変ね?

 みたいにクビを傾げる岸君に。

 あたしは、慌てて手を振った。

「話しがあるなら、顔見て話そう?」

「いいけど……昨日の夜にでも、何かあったの?」

 ……ぎく。

 意外に鋭い突っ込みに、あたしは、別に、何もないけどってごまかした。

 ……兄貴とキスした、なんて。

 岸君には、とても、言えないもん。

「そ……それよりも、さ。
 ちょっと逢うだけでも、こんな風にこっそり……なんて、イヤよねぇ。
 しかも、今だって、早瀬倉先生たち、あたしを探してるって?」

 また、大事になる前に、みんなと合流しなくちゃ、って言ったあたしに、岸君は、寂しそうな顔をした。

「……愛莉さん。
 私と二人っきりって、イヤ?」

「べ。別にそんなことないけど……
 ほら、今は、狼だの、天竜組だのって騒いでるじゃない。
 なんだか、おちつかなくて、さ」

 ……ウソだ。

 落ち着かないのは、岸君の、視線。

 昨日の夜、兄貴とあんなことがあった揚句、伊井田さんに『抱かれちゃえば?』なんて言われて……なんか。

 あたし、余計なトコロを意識してる。

 そんな思いを振りきる様に、あたしは言った。

「二人でいるのは、イヤじゃないよ。
 だって、岸君、彼氏でしょ?」
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