俺様先生と秘密の授業【完全版】
 そんな、あたしの言葉に、岸君は、とても嬉しそうな顔をした。

「彼氏か……何か、とてもいい響きね。
 じゃあ、私の……ううん。
 オレの、彼女さん。
 大好き、だよ?」

 そう言って、笑ったあと……岸君が、口の中でこっそりつぶやいた言葉を、あたしは、聞いた。

「……ちょっと、無理したけど、この街に……この学校に、残れて、本当に、良かったよ……」

「そう言えば、岸君は、叔父さんの家を出てるんだよね?
 今、どこに住んでるの?
 もし、本当に、住む場所に困ったら……その……」

『兄貴が、家を用意、してくれるって……!』

 ……って言う言葉が、どうしても言えなくて、黙ってしまってた。

 ……兄貴の力を不用意に借りない方が、良いかもしれない、って言うカンが働いたのかもしれない。

『追い詰めて、排除してしまいたい、と思うのは、罪?』

 なんて言う、兄貴の言葉が、耳の底で鳴り響く。

 兄貴の誘いは『罠(わな)』かもしれない…… 

 そんな、複雑な思いを知ってか知らずか、岸君は少し笑った。

「もう、叔父さん家は、出てるけど本当に、大丈夫だし。
 オレは、今ソコ以外、どこにも住めないんだ。
 ありがとう」
 



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