俺様先生と秘密の授業【完全版】
 それよりも、って優しい岸君は、静かに言った。

「ね?
 せっかく二人になれたから……
 キスとか……していい?」

「え?」

「……ダメ?」

 岸君が、そんな風に言うのは、反則だよ。

 ……でも、半分予想してた言葉に、あたしは、思わず聞いた。

「キス、だけでいいの?」

 それは。

 本当は……キスだけで止めてくれるの? ってことだったのに。

「キスの続きも、させてくれるの……?」

 なんて。

 岸君に、にこっ、と笑って言われた。

「えっ……でも……」

 なんて、言う、あたしの軽い拒否は。

「もちろん『学校では』しないから」って別の意味に取られて、そして、やっとあたしは、気付く。

 ……もしかして。

『お子様』なのは、あたしだけ?

 兄貴も、伊井田さんも、岸君も。

 当たり前みたいに、そう言って、先に進んでゆこうとする。

 ……なんの、ためらいも、なく。

 怖くは無いのかな……?

 怖い、と思うのは、あたしが、オトナじゃないからなのかな……?

 自分だけが、みんなと違う、仲間外れな気分で、すごくイヤだ。

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