俺様先生と秘密の授業【完全版】
「……タバコなんて、今どき古っ!
 今は、みんなこぞって禁煙なのに」

「俺は、オールド・ファッションが好きなんだ。
 ヒトの趣味に口出すんじゃ、ねぇよ」

 言って直斗は、口の端にタバコを張り付かせたまま、言った。

「……愛莉。
 お前、俊介とは、ケンカしたろう?」

「……なんで。
 そんなこと……」

 ……関係ないじゃない。

 と、続けようとしたあたしに、直斗は、肩をすくめた。

「昨日。
 真夜中に呼び出されて、朝まで、ツーリングに付き合った。
 まだ、追悼期間だし、走りたければ、狼たちと行けばいいのに、気分じゃないんだとさ」

「……」

「確かに、今までみたことないほどのスピードを出してた上、ぼんやりしてたからな。
 俺をツーリング・パートナーに選んだのは、大正解だ。
 狼で走ってたら大事故になったかも」

 一瞬、俺と心中するつもりじゃないかって走りに、ヒヤヒヤしたぜ。

 なんて、苦く笑う直斗に、あたしは、ため息をついた。

「あたし……昨日、さ。
 兄貴にキス、されちゃったから……」

「え?」



 ……驚いた直斗の口の端から、火のついてないタバコが、ぽろり、と落ちた。

 

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