俺様先生と秘密の授業【完全版】
 いつの間にか、座ってた椅子を立ち。

 本当に、子供みたいに、わあわあ泣き出しちゃったあたしを。

 タバコの匂いのする優しい腕が、強く、抱きしめた。

「……悪りいな。
 でも。
 好きだ、なんて言ったら、せっかく固めた決心が、鈍りそうで」

「あたしが、オトナになるまで、待つっていう?」

「そう。愛莉はすごく魅力的だから」

「……もたもたしてたら、あたしがどっかに行っちゃうと思わなかったの?」

「ここ、何日かで、すごく思った……」

 ……正直な、所……と。

 直斗は、あたしを抱きしめながら、ささやいた。

 岸には、ともかく。

 兄貴にだったら、愛莉を譲ってもいいか、と思ったこともある、と直斗は言った。

 過去に、兄貴の彼女を奪ったことになっていたから。

 二度も続けて、兄貴の愛した『女』を取るわけにはいかないと。

 けれども。

「俊介と愛莉が口づけた話を聞いて、どうしても譲れないと、思った」

 結局、俺だってオトナのふりしたただのガキだったんだって、直斗は苦く笑う。





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