俺様先生と秘密の授業【完全版】
 
 どがんっ!


 と。

 まるで、保健室の扉が吹き飛ぶような音がして、何人かが、部屋に飛び込んできたらしい。

 ぎしっ、と事務用丸椅子を鳴らして、早瀬倉先生が立ちあがる気配がした。

「保健室の扉は、静かに開けるもんだ。
 そう、学校で習わなかったか……?」

「……何だコイツ!
 教師は関係ねぇ! すっ込んでろ!!」

「そんなワケには、いかねぇな。
 俺は、生徒(ガキ)を守って、導くことで給料を貰ってる」

 ……早瀬倉先生は、保健室への乱入者に、すごく冷静な声で受け答えしている。

 基本、いくらケンカが出来ないとはいえ。

 四年前には、沈黙の狼の副総長『鳥』だったヒトだ。

 集団に囲まれたくらいでは、驚かない。

「お前たち、他校に遊びに来る時は。
 手みやげは、持って来なくてもいいから、事前に予約を取って、静かにやって来い。
 今日は迷惑だから、もう帰れ」

「ざけんじゃねぇぜ!」

 がしっ、と殴られる音がした。

 そして、テーブルに当たり、バサバサとバイク雑誌が滑り落ちる音が続く。

 ……直斗……!

 あたしが、手を握り締めると、天竜組は、ふんっと鼻を鳴らした。

「けっ、胆(きも)の据わった先公だな。
 これくらいじゃ、眉ひとつ動かさねぇって?
 さっき出くわしたヤツは、ちょっと脅したら腰を抜かしたのに」

「……」

「いいぜ?
 オレたちゃ、ヒト探しをしに来たんだ。
 この学校に、水野小路って言う、女の生徒がいるだろう?
 そいつを出せ。
 そしたら帰ってやらあ」
 
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