俺様先生と秘密の授業【完全版】
 問題は。

 昨日、今日クリーニングに出した訳ではないので、汚れている所ですが……

 すみません、と。

 あたしに手渡してくれてたジャケットは。

 黒い革製で、背中に沈黙の狼のエンブレム。

 胸には。

 デザイン化されていて良く判らないけれども1/4と書かれているらしいヤツで……

 気になって、周りを見れば。

 他のヒトには1の部分が2以降になっている。

 つまり。

 吉住さんは、トップ4の中でも一番上、って言うことらしく。

「……本当に、いいの?」

 もう一度聞いたら、今度は。

 何も言わずに、上着をかけてくれた。

 と。

 汚れてる、なんて言ってだけど、とんでもない。

 とても大事にしているみたいで、きちんと手入れをしている。

 何かの弾みで、ジャケットの右すそを大きく切ったあとも、ちゃんと直されていた。

 それに、羽織ったときに、ふわり、と吉住さんの匂いがしたけど、嫌じゃない。

 吉住さんは、兄貴より一回り大きくて。

 あたしが着ると、だぶだぶになる上着を整えて言った。

「これで、前を閉めれば、車までくらいならバレないんじゃないですか?」

「あ……ありがとう」

 素直に、お礼を言ったら、不機嫌そうな兄貴と、目が合った。



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