俺様先生と秘密の授業【完全版】
 言って、兄貴は、ますます苦い顔をすると口の中で呟いた。

「……しかし。
 いくら親父の作戦だからって言ったって。
 もう、岸を使った小細工や……愛莉を囮に使うことは。したくないな」

「「え?」」

 口の中でつぶやく兄貴の言葉に、あたしと、吉住さんが聞き咎めた。

「小細工って、岸君を狼に家つきで受け入れる、って情報が流れたのも?」

「親父が、内部分裂を誘うために、勝手に流した」

「愛莉さんを囮って……もしかして、愛莉さんが学校にいるって言う情報が流れたうえ。
 狼の応援部隊が学校へ二分ほど遅れたのも?」

「……誰かが、発信器を持って、天竜組に潜入しないと行けないのに、お前と岸は、強すぎだ。
 時間通り来たら、全員助かってしまうだろう?
 本当に愛莉が混ざっている時点で、俺は計画を中止したかったし。
 しかも早めに着いたのに、四分間もクソ親父に引き留められた」

 ……そう言えば。

 あの時、狼の後ろに水野小路の車もあったっけ。

 あそこに、父さん、いたんだ。

「岸が庇わなかったら、愛莉が怪我をしていた。
 目的の為には、身内の命も軽んじる。
 あんな親、天竜が欲しいならならくれてやる」


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