俺様先生と秘密の授業【完全版】
「女の子が、大きなサイズの上着を着ると、可愛いから。
 オレが、愛莉に自分の上着を着せたかったのに」

 ちょっと上目使いの兄貴の言葉に、吉住さんは、慌てて、あたしから飛び離れた。

「す、すみません!
 しかし……!」

「しかも。
 オレは愛莉に付き添って病院に行くから。
 単車をお前に任せるつもりだった」

「大総長の単車に、乗っていいんですか!?
 それは、嬉しいです……!」

「だが。
 オレの単車は、沈黙の狼のトップ4以上のヤツ以外、誰にも触らせねぇのは、知ってるな?
 なのに、お前。
 トップ4の証(あかし)の上着を脱いで、どうするよ?」

「あ……」

 そこのところは、考えてなかったらしい。

 吉住さんの困った声に、兄貴は『莫迦』と笑うと、自分の上着を改めて脱ぎだした。

「部外者は、ともかく。
 トップ4が、一時的にオレの上着を着る分には。
 誰も文句をつけないんだろ?」

「そうですが、まさか……!」

 戸惑っている吉住さんに、兄貴は、自分の上着を投げつけると言った。

「2、3日、単車と一緒にお前が、使っとけ。
 オレは、愛莉がちゃんと大丈夫だって判るまで、走らないから」
 
< 32 / 362 >

この作品をシェア

pagetop