俺様先生と秘密の授業【完全版】
 え……と、伊井田さん!?

 しかも、城田先生をじいちゃん、って、ナニ……!?
 
 あたしが驚いていると、城田先生は肩をすくめて言った。

「伊井田 梢は、私の娘の娘です。
 高学歴を誇るウチの一族のなかで、ストレスだったのか。
 大分自由奔放に育ってしまいましたが……
 うんと小さな子供のころ以来。
 寄りつきもしなかった我が家に乗りこんで来たあげく、ずっと、あの調子です。
 よっぽど、加月さんのことが心配だったんでしょうね?
 それとも、他人の事を親身になって考えることができるほど。
 オトナになってくれたんでしょうか」

 言って、城田先生は、そっと笑った。

「愛しくて、自分の経営する学校に、孫の名前を入れるほどの祖父莫迦(じじばか)です。
 あなたが、いろんな環境にもめげず、まっすぐ歩いていきたい、というのなら。
 これから、卒業までの一年半。
 多少の波風は覚悟で、加月さんに、お付き合いしましょう」

「だって、これから、カッキーと一杯、お話するんだもんね……?」

 そう言って、伊井田さんは、おいでおいでをするように、両手を振った。

 あたし。

 今まで、伊井田さんと真面目に話をしたことなかったから。

 こんな大きなことだって知らなかった。

 伊井田さんだって、きっと、悩んでいることも、色々あったろうに。

 それでも、いつも明るく。

 沢山のお友達のなかで、笑っていたんだ。



 ……本当に涙が出て来た……

 
< 355 / 362 >

この作品をシェア

pagetop