俺様先生と秘密の授業【完全版】
 二人は、食べかけのお弁当が広げられた、テーブルの横で。

 寄り添うように立っていた。

 早瀬倉先生は、扉に対して、斜め後ろに背を向けている。

 そして、伊井田さんは、つま先立ちで立ち。

 早瀬倉先生の背中を、ぎゅっと抱きしめていた。

 深い。

 映画やテレビドラマで見るような、オトナのキスじゃないようだった。

 けれども。

 二人の唇同士が、触れ合っているところを、あたしは、見た。

 それこそ、作られた物語じゃないキスを見たことは、今までなかったから。

 どうしていいのか分からずに、呆然と見入ってしまったあたしに。

 最初に気がついたのは、廊下に対して、ほぼ正面を見ていた伊井田さんだった。

 びっくりして、言葉も出ないあたしに。

 伊井田さんは、早瀬倉先生の影から、すごく得意気に、あたしを見た。

「……!」

 驚い……た。

 驚いた!

 なんて、こと!!

 言葉、なんて出てきやしなかった。

 ただ、ただ。

 二人がキスしてたって言うコトに驚いて。

 あたしは、その場を逃げ出そうとした。

 


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