俺様先生と秘密の授業【完全版】
 
 がちゃんっ!

 どんっ!


 あたしはくるり、と二人に背を向けると。

 そのまま、保健室から出ていきかけて、失敗する。

 自覚は無かったけど、かなり焦ってたから。

 半分だけ開けて、入って来た保健室の扉にものの見事に、ぶつかった。

 その音で、初めて。

 早瀬倉先生は、あたしの存在に気がついたみたいだった。

「あ……愛莉!」

 なんて。

 驚いたような、早瀬倉先生の声が、あたしの肩越しから降ってくる。

 けれども。

 後ろを振り返る、なんてことはできない。

 伊井田さんは、もちろん。

 早瀬倉先生の姿だって、見たくなんてなかったんだもん。

 あたしは、今度はきちんと扉を開けると、お弁当を抱えたまま、保健室を飛び出した。

「愛莉……待てよ!」

 さっきより大きな早瀬倉先生の声が、引きとめたけど。

 それは、別の声が、遮った。

「やあねぇ。
 早瀬倉先生って、あんなコが気になるの?
 根暗だし。早瀬倉先生に似合わないわ。
 そもそも、彼氏がいるのよ?
 やめておいた方がいいわよ、絶対に。
 あはははは♪」

 



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